親御様が亡くなられた直後、悲しみの中で直面するのが「雑多で複雑な相続手続き」です。
多くの方が「どこかの先生(専門家)に頼めば全部やってくれるだろう」と考えがちですが、実は医療に「内科」「外科」「眼科」があるように、相続の専門家にも法律上の専門領域(できること・できないこと)が存在します。
相談先を間違えてしまうと、途中で別の専門家に頼み直すことになり、余計な費用や時間がかかったり、提出期限に間に合わなくなったりするリスクがあります。
この記事では、税理士となじみのない会社員の方に向けて、ご家庭の状況に応じた「失敗しない専門家の選び方」を分かりやすく解説します。
【ケース別】あなたに必要な専門家は誰?4つの選択肢
相続の手続きに関わる主な専門家は、「税理士」「司法書士」「弁護士」「行政書士」の4つです。ご自身の状況に合わせて、最適な相談先を選びましょう。
ケース①:相続税の申告が必要な場合(または判断がつかない場合) ➔ 「税理士」
お亡くなりになった方の遺産総額が、相続税のボーダーラインである「基礎控除(きそこうじょ)」を超える場合は、税理士の領域です。
「都心やその近郊に一戸建ての実家がある」「少しの貯金や生命保険がある」といったごく一般的な会社員家庭であっても、不動産評価によっては基礎控除を超えてしまうケースが多発しています。
数ある相続手続きの中で最もタイムリミットが厳しいのが、死亡から「10ヶ月以内」に行う相続税の申告・納税です。「基礎控除を超えるかどうかわからない」という段階であっても、まずは税理士へ相談して財産の試算を行ってもらうのが最も安全です。
ケース②:申告は不要だが、実家(不動産)がある場合 ➔ 「司法書士」
財産を計算した結果、基礎控除以下で相続税の申告が必要ない場合、税理士へ相談する必要はありません。
ただし、お父様やお母様の名義になっている実家(土地・建物)やマンションがある場合は、名義人を変更する「相続登記(そうぞくとうき)」を行う必要があります。この不動産名義変更の専門家が「司法書士」です。
ケース③:相続人同士で揉めている・話し合いが困難な場合 ➔ 「弁護士」
遺言書が残されていない場合、誰がどの財産を引き継ぐかを、相続人全員で話し合って決める「遺産分割協議(家族会議)」を行います。
- 「遺産の分け方について兄弟で意見が割れて合意できない」
- 「特定の相続人が財産を独り占めしようとしている」
- 「そもそも関係が悪く、話し合いをするテーブルにすら着けない」
このように相続人同士でトラブルが発生している場合や、交渉が難航している場合の相談先は「弁護士」一択になります。税理士や行政書士などの他の士業は、法律上、特定の相続人の代理人となって相手と交渉することはできません。
ケース④:申告不要・不動産なしで書類作成のみ依頼したい場合 ➔ 「行政書士」
相続税の申告も不要、不動産もなく、相続人同士の話し合いも円満にまとまっているケースです。
トラブルもなく名義変更をするだけですが、「仕事が忙しくて平日に役所や金融機関へ行く時間がない」「遺産分割協議書や銀行の解約書類の作成だけを代行してほしい」という場合は、行政書士へ相談するのがスムーズです。書類作成や手続き代行を専門に行ってもらえます。
【疑問】「うちも申告が必要?」判断がつかない時はどうする?
「実家の土地の評価額がわからないから、基礎控除を超えるのか判断できない」という方も多くいらっしゃいます。
その場合も、まずは税理士へ確認することをおすすめします。
多くの税理士事務所では、初回の相談や「申告が必要かどうかの簡易判定」を無料で対応しています。
自分たちだけで判断して「申告はいらないだろう」と放置し、後から税務署の指摘を受けて追徴課税(加算税など)を課されるリスクを防ぐためにも、まずはプロの目で試算してもらいましょう。
まとめ
今回は、相続が起きた際のケース別・専門家の選び方について解説しました。
- 相続税の申告が必要(または判断不能)→税理士
- 申告は不要だが不動産がある→司法書士
- 遺産分割で揉めている・話し合えない→弁護士
- 申告不要・不動産なし・名義変更のみ→行政書士

数ある相続手続きの中で、最もタイムリミットが厳しいのは「10ヶ月以内」の相続税申告です。
どこに相談すべきか迷った場合は、まず一番期限がタイトな「相続税の申告が必要かどうか」を税理士に確認してもらうのが一番の近道となります。
仮に確認の結果「申告は不要」と判明した場合でも、多くの税理士事務所は提携する司法書士や行政書士を紹介してくれるため、そのままスムーズに次の手続きへ移行できます。
申告期限ギリギリになってから慌てて相談すると、緊急対応として報酬が上乗せ(加算料金)されてしまうケースもあります。まずはご家庭の財産状況を正しく把握し、落ち着いて適切なステップを踏んでいきましょう。








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